研究所紹介
About ICRR
所長挨拶

東京大学宇宙線研究所長
梶田隆章

2011年4月1日

 平成23年度当初にあたり、ご挨拶申し上げます。

平成23年3月の東北地方太平洋沖地震により被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。被災された地域と皆様の一日も早い復興を願っております。

宇宙線研究所は宇宙から飛来する宇宙線の観測と研究を様々な角度から行っています。研究所の歴史は1950 年に朝日新聞学術奨励金で乗鞍岳に建てられた宇宙線観測用の「朝日の小屋」に始まります。その後1953 年に東京大学宇宙線観測所となりました。この観測所は、わが国初の全国共同利用の施設でした。そして1976年に現在の名称の東京大学宇宙線研究所となり、全国共同利用の研究所として宇宙線の研究を進めてきました。

研究所は宇宙粒子線を研究手段として、動的な高エネルギー宇宙を解明するとともに素粒子物理のフロンティアを開拓する研究を行っています。そのため研究所には、宇宙ニュートリノ、高エネルギー宇宙線、宇宙基礎物理学の各研究部門があり、研究スタッフはどれかの研究部門に所属して研究を行っています。研究所は東大の柏キャンパス内にありますが、それと共に研究所は国内に3つ(岐阜県飛騨市の神岡地下、乗鞍岳(2,770メートル)、山梨県の明野高原)と海外に3つ(チベット・ヤンパーチンの高原(4,300メートル)、オーストラリア・ウーメラの砂漠、アメリカ・ユタの砂漠)の観測拠点を持っています。超新星ニュートリノやニュートリノ振動(質量)を発見した神岡は特に有名なのでご存じの方も多いかと思います。このように研究所では観測しようとする宇宙線の観測に最も適した場所を世界中から探し、そこで研究を行っています。

研究所では平成22年4月1日から新たな共同利用・共同研究拠点制度のもとで活動をしております。しかし従来通り全国の宇宙線研究者と共に共同利用研究を進めていく姿勢に変わりはありません。毎年100件程度の共同利用研究が全国の宇宙線関連研究分野の研究者の方々によっておこなわれています。したがって、宇宙線研究所の研究成果は全国の宇宙線研究者との共同研究の成果であると言えます。また、宇宙線研究所の研究のほとんどは国際共同研究です。

近年の宇宙線研究分野の発展はめざましく、世界中の研究機関から本当にエキサイティングなニュースが飛び込んで来ます。宇宙線研究所は今後も世界の宇宙線研究の中核をなす機関として世界の宇宙線や関連する研究に貢献していくつもりです。宇宙線研究所では節目ごとに外部の有識者を多く含む将来計画検討委員会を組織して、研究所の将来の中核となる研究を検討してきました。なかでも重力波の観測研究は、研究所として1990年代半ばからの悲願であり、科学的にも極めて重要なテーマとの認識を持ってきました。このようななか、平成22年度文部科学省の「最先端研究基盤事業」による補助対象事業の1つに大型低温重力波望遠鏡(LCGT)プロジェクトが選定されました。これは皆様からの強いご支援によるものです。皆様のこれまでのご支援に感謝いたします。これを受けて、研究所ではLCGTプロジェクトをホスト研究機関として強力に推進するため、本年4月1日に重力波推進室を設置しました。今後、本推進室を中心に国内外の共同研究者とともにLCGTの建設を行い、世界に先駆けて重力波の初観測と重力波天文学の創成を目指していきます。今後も一層のご支援をお願いいたします。

宇宙線研究所の研究計画を進めていくためには、今後も宇宙線関連分野の研究者の皆さんの支持、大学からの支持・支援が必要なことはいうまでもありません。また国からの支援もますます重要になっていきます。今後とも、宇宙線研究所の研究活動にご支援をお願いしますとともに、本研究所からの研究成果にご注目下さい。